人類に不要とされたジンバルの創始者について
いまやYouTuberとなったドリキンが安定したビデオ撮影のため、ジンバルに興味を持っているらしく、ついにはロボティクスジンバルカメラとも言えるDJI OSMOをみんなが止めるのも聞かずに購入。水平にならないとか音がうるさいとか苦労しながらも順調に撮影しているようだ。
WWDCでもこれを活用しており、毎日何度もDJI OSMOの説明をしながら動画を撮り続けている。
一方、いしたにまさきさんは発表されたばかりのSONYアクションカムが空間光学手ブレ補正機能を搭載しているのを知り、さっそく予約。「人類にジンバルはいらなかったんだよ」説を唱えてドリキンを刺激している。
しかし、ジンバル。ジルジャンとかパイステとかのシンバルじゃなくてGimbal。実は最近になるまでどんなものか知らずにいたのだ。そこで、ちょっと歴史を調べてみることにした。
http://www.biccamera.com/bc/c/camera/stabilizer/index.jsp
最近聞くジンバルとは、カメラスタビライザーのこと。機構としてのジンバルは、「1つの軸を中心として物体を回転させる回転台の一種である。軸が直交するようにジンバルを設置すると、内側のジンバルに載せられたロータの向きを常に一定に保つことができる」とWikipediaでは定義されている。別にカメラに限らない、ジャイロスコープ、羅針盤からドリンクホルダーまで、この機構が使われている。
何事にも創始者というものがあるわけで、ジンバルの場合、それは紀元前3世紀後半に生きていた発明家・数学者・著述家の、ビザンチウムのフィロンの記録にでてくるらしい。
フィロンは旅行家でもあり、世界の7不思議の元ネタとなっている、世界の7つの景観を提唱した人としてのほうがよく知られている。
彼の著作の多くは失われているが、ヘロンなどに言及されていて、いくつか残っているものがあり、カタパルトや自動洗面台と並んで記録されているものの1つが、ジンバルというわけだ。
フィロンのジンバルは、インク壺を安定させる目的で考案されたもので、金属輪の中心部に吊るされた8面体インク壺の開口部が常に上を向いていて、こぼれないようになっている。一番上にペンをつければ、揺れているところでもいつでも字や絵が書ける。当時、そんなニーズがあったんだな。
いま使われている「ジンバル」が、撮影を安定させるものであるのに対し、自分で字や絵を書くという違いこそあれ、目的は同じだ。いつでも安定した状態で記録をとりたいという、2200年くらいの人類の歴史の一部なのだ。
当時は馬車とか船とかに乗りながら執筆しようとして、インク壺ジンバルを発明したのだろうか。それとも歩き物書きとかやって、「最近の若者はマナーを知らん」と言われたりしたのだろうか。
まあ、そういうわけなので、ドリキンがジンバルがほしい、ジンバルがほしい、と言っても、許してあげてほしい。古代ギリシャからの、人類の歴史なので。
ところで、このフィロンの考案物の1つである、自動洗面台。蛇口がアヒル口。フィロン先生おちゃめすぎ。まつゆうのファンかなんか?
このあたりのことを調べていて、Wikipediaにこんな項目があったのを知ったのだが、まあこれは面白いよね。
人類の技術史。ひまつぶしにいかがでしょうか。